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てんやわんや④

フリーズする俺を他所に、課長は何ともないように立ち上がると、会議室の入口の施錠をしに行った。 そして戻って来ると 「これ、見ろ。」 と一言。 ベルトをかちゃかちゃ言わせて、スラックスをするりと脱いだ。 えっ?えっ?何するの? ますます固まる俺を無視して、脱いだスラックスを椅子にかけると、静かに目を瞑った。 と、見る間に、目の前にふさふさの見事な尻尾が現れた。 「うっわ」 と大声を出しそうになった俺の口を両手で塞ぐと 「落ち着け!…手を離すぞ。」 俺がこくこくと頷くのを見て、ゆっくりとその手を外していった。 心臓が飛び出しそうに痛い。 喉が、からっからに乾いて引っ付いている。 息をするのも忘れそうだった。 いや、実際呼吸は止まっていたかもしれない。 課長の尻尾は、揶揄うように ゆらゆらと揺れている。 やっとのことで言葉を絞り出した。 「…課長…人狼だったんですね…」 「お前もだろう?」 「…お気付きでしたか?」 「お前の親父さんは有名人だからな。 人狼の『駆け込み寺』だから。 入社試験の時から知ってるよ。 で?番が見つかったんだろ?シルバの親か?」 はあっ……諦めて頷いた。 「…そうか…退職はそのためだな?」 「…はい。」 「子育てと…妊娠の可能性か?」 「…………」 黙って頷くしかなかった。 「じゃあ、問題ない。仕事続けろ。」 「はあっ!?」 裏返る声で 叫ぶ俺を無視して、課長は尻尾をしゅるんと片付けるとスラックスを穿いた。 「仕事続けろ。妊娠するまでは今まで通りで。 あ…保育園の送り迎えがあるのか… それなら…パート扱いになるが、時短にして負担のない別部門に移動させる。 臨月近付いたら産休使え。」 頭が付いていかない。

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