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てんやわんや⑦
黒曜さんは俺の頭を撫でながら
「俺達の子供ができたら…ってことか?」
と優しく聞いてくれた。
「あれもこれも、こなしていく自信がない。
不器用で一つのことしかできないから。
急に『事務方に行け』って言われても、どうしていいのかわかんない。
悪阻が始まったらどうしよう。
シルバの送り迎えもしなくちゃ。
黒曜さんだけに負担をかけるのは嫌だ。
仕事に差し支えて〆切に間に合わなくなったらどうしよう。
ご飯の用意もしなくちゃ。
あれこれ考えてたら、頭が真っ白になっちゃって…黒曜さんに会いたくなった。
そしたら…本当に会えちゃった。」
えへへ と笑う俺の頬を挟み込んで、優しくキスしてくれた。
「こっ、黒曜さん!?」
鼻先もペロリと舐められて
「輝は何に対しても一生懸命過ぎる。
もっと肩の力を抜いて。
営業の仕事が合ってるなら、そのままでもいいが、正直、妊娠…してるかもしれない。
もしそうなら、早めに退職するか、アドバイス通りに部署移動した方がいい。
…輝の匂いが変わったんだ。
俺達の子供ができてるかもしれない。」
「…え?本当に?本当に赤ちゃん、できたの?
ふふっ…うれしい…黒曜さんと俺の…赤ちゃんがここに…いるの?」
「断定はできないが…甘い匂いになってる。
もう少ししたら、病院行こうな。」
お腹に手を当てて、黒曜さんに頷いた。
「俺はシルバの送り迎えなんて、負担だなんてこれっぽっちも思ってない。
あの子のうれしそうな顔を見るだけで、幸せな気分になる。
輝と愛し合うようになって、一緒に暮らしてくれて、逆にアイデアが湧いて、原稿が進み過ぎて困るくらいだ。
輝程にはできないが、俺だってご飯の用意くらいはできるさ。
今までだってやってたんだから。」
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