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いき違い⑤
俺は瞬きを繰り返し、急いで目元を手の甲で擦った。
「…何でもない…大丈夫です。もう、上がりますから…」
黒曜さんは、黙ってじっと俺の目を見ていた。
青い目に吸い込まれように思えて、耐えきれずに思わずふっと視線を逸らすと、黒曜さんは全身ずぶ濡れになりながら俺を抱き上げ、バスタオルで拭き上げ始めた。
「こっ、黒曜さん!?自分でやります!
それに、黒曜さんが濡れちゃったじゃないですか!」
そう言っても黒曜さんは止めてくれない。
とうとう頭も乾かされ、新しいバスタオルで巻かれてしまった。
黒曜さんは、びしょびしょの服を無造作にカゴに放り込むと、何も身に纏わず、俺を抱き上げて寝室へ運んでいった。
布団を足で蹴り上げると、俺をそっと寝かせてバスタオルを剥ぎ取った。
そして、俺を抱きしめて布団を被ると
「何が悲しいんだ?ちゃんと言わなきゃわからないだろ?
俺は鈍いから、お前の思いを伝えてくれないとわからない。
…どうせ俺が原因なんだろうけど…
何よりも、輝が泣くのが辛い。
それに、こんな微妙なすれ違いの空気は嫌だ。」
甘えるように髪の毛に頬を擦り寄せる黒曜さんに、俺も素直に伝えることにした。
「…だって、黒曜さんが……」
「俺、何かやった?何か言った?」
「…『無理矢理抱いた』とか『負担だ』とか、『自分を許せない』とか…
ちっともそんな風に思ったことないのに…
俺…俺の存在って、黒曜さんの負担になってるの?
重過ぎる?
子供できたら嫌なの?
俺はただ…黒曜さんとシルバと、子供ができたらその子も…普通に暮らしていけたら、それでいいのに…」
説明しながら、また泣けてきた。
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