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いき違い⑥
泣き出した俺を前に、黒曜さんがオロオロしている。
「そんなっ!そんなこと俺だって思ってない!
ただ、輝を悩ます原因を作った自分が、配慮がなさ過ぎて情けなかっただけだよ。
輝は最近自分が人狼だってわかったばかりで、戸惑うことも多い。
本当は、俺がちゃんと気を付けていれば、輝があれこれ悩む必要なんてなかったんだ。
…大切な、愛する輝を苦しめてるのが俺だってことが許せなかっただけで…
あー、もう…言葉も足りなくてごめん!
だから、頼む、泣かないでくれ…」
えぐえぐと泣き続ける俺を抱きしめて、黒曜さんが精一杯の思いを打つけてくる。
全身に、温かな体温が伝わってくる。
俺の好きな黒曜さんの匂いに包まれていく。
ぐすぐすと鼻を鳴らし泣き止んだ俺に、黒曜さんはホッとしたようだった。
「…本当に…愛してるんだよ。
大切で愛おしくて、ずっと側にいたいんだ。
今まで、こんなに人を好きになって大切にしたいと思ったことがなくて…どうすればいいのかわかんなくて、正直戸惑っている。
だから、言葉が足りなかったり、ぞんざいな態度を取ったりするかもしれない。
もしそれで、輝が不快に思ったり傷付いたりしたら、すぐに俺に言ってほしい。
その都度その都度、俺の思いを伝えるから。
今日も…傷付けてごめん。
輝が心配するようなことは何一つ思ってないから。
ただ、輝は頑張りすぎるから、それは程々にしてほしい。倒れでもしたら大変だ。
少しでも辛いと思ったら、すぐ俺に言うこと。
いいね?」
「…黒曜さん…」
俺は、その胸にぐりぐりとおデコを擦り付けて、ぴったりとくっ付いた。
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