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いき違い⑦
黒曜さんは、布団を俺の肩まで掛けてくれ
「落ち着いたか?」
と優しく聞いてくれた。
即答はできなかったが、こくんと頷くと
「…今夜はこうやって、抱きしめ合って寝ような。
シルバも、いろいろあったみたいだが、俺も…このまま、輝の温もりを感じて大人しく寝るとするか。」
俺は黙って黒曜さんの胸元に頬を寄せた。
もう、涙は止まっていたのに、気持ちがまだ ざわついている。
心の奥にこびり付いた、この苛立ち…不安…怯え…は何なのだろうか?
黒曜さんは、ちゃんと思っていることを伝えてくれた。
ちょっとした心のいき違いだとわかった。
解決したから、それでいいんじゃないのか?
…俺は何が気に入らないんだろう。
「…輝…何が悲しい?まだ納得してないことがあるんだろう?」
驚いて顔を見上げた。
また…じわりと涙が溢れてきた。
「…わからない。自分でもよくわからない。
すれ違ってた気持ちもわかって、黒曜さんの気持ちも教えてもらって…解決したはずなのに、気持ちがざわついて…何が気に入らないのかよくわからない。
この気持ち、何なんだろう…わかんない…
訳もなく苛立ってる。
不安で怖くて…わからない…わかんないよ…」
またぐすぐす泣き始めた俺の背中を摩りながら、暫く何か考えていた黒曜さんは
「…ひょっとしたら、身体が変わってきて、ホルモンのバランスとか崩れてるのかもな…
輝、明日早退できそう?
引き続きするのは来週からだろ?」
「…はい、多分…課長も事情を知ってるし…」
「やっぱり明日、病院に行こう。
退社時間がわかれば、俺が迎えに行くから。
原因がわかれば落ち着くだろうし、何よりも、輝が泣くのが辛い。
ね?そうしよう。」
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