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診察②
小さな窓の受付に、人の良さそうな年配の女性が座っている。
「おはようございます。初診の方?
では、こちらにご記入をお願いしますね。
体温も測っていただいて…
あ…受付の書類、お預かりしますよ。」
ちょっとホッとした。
体温計を脇に挟んで、問診票を書いていく。
住所…名前…生年月日…連絡先…勤務先…
『今日はどうされましたか』
え…文章で説明って難しいな…
飲酒は…週一だな…タバコは…吸わない。
『夫婦生活は』ひえっ!そんなことまで書くの?冗談抜きで!?
困って黒曜さんの顔を見ると
「ほぼ毎日」
とささやかれた。
ぼふっと全身が熱を持ち、顔から火が出そうになる。
と、そこへ
「体温どうですかぁ?」
と、さっきの看護師さんがやって来た。
手が止まり、真っ赤な顔の俺を見て
「恥ずかしいことじゃないんですよ。
愛し合ってるなら当たり前のことです。
診断の参考にもしますから、ありのままをご記入下さいね。
はい、体温計を出して…あら、微熱があるのね。」
問診票に、さっと目を通すと
「何もかもが急激に変化しちゃったのね。
大丈夫ですよ!
先に採血と検尿を済ませて下さい。
右の角がトイレ、その向かいが採血の所。
それが終わったら中で身長と体重を測るから、声を掛けて下さいますか?
ご主人はここでお待ち下さい。
後でお呼びしますよ。」
優しく言われて、安心した。
黒曜さんに「行ってきます」と 告げて、まずトイレに向かった。
検尿と採血が終わったことを告げると、身長と体重を測ってもらって、しばらく待ってから診察室に案内された。
「はい、どうぞ。どうしたのかな?」
父と同じくらいの年かな?
にこにこと笑顔で迎えられ、肩の力が抜けた。
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