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診察③
「実は…」
俺は先生に今の状態を切々と訴えた。
先生は、俺の目をじっと優しい眼差しで見ながら話を聞いてくれ、問診票と、看護師さんが持ってきたデータを見ながら
「葛西 輝さん。
情緒不安定。身体が変わったような気がする。
それから………
ふんふん。なるほど。
じゃあ、診せてもらおうかな。
そこに仰向けになってお腹を出してくれる?」
さっきの看護師さんがやってきて、鳩尾までシャツをめくり、際どいところまでズボンとパンツを下げると、汚れないようにタオルを巻き込み、その上からバスタオルを掛けてくれた。
「ジェルを塗るから、冷たいけどごめんね。」
にゅるりとチューブから出されたピンク色のジェルが肌を滑る。
少し冷たくてピクリと動くと
「ごめんね、ちょっと我慢してね。」
と優しい声で言われる。
ハンディの機械にもジェルを塗った先生が
「はい、診ていくね。」
と、それを動かし始めた。
画面を見ても俺には全然わからない。
しばらく動かしていた先生は、お腹の真ん中を何度も丁寧に診ていたが
「…葛西さん、見えるかな?ここ。ほら。
小さな部屋みたいなの、見えるでしょ?
これ、子宮。赤ちゃんのお部屋ができてるんだよ。
…人狼はね、人間よりもずっとスピードが早いんだ。
これね、さっきの検尿と採血の結果。
ちゃんと陽性反応が出てる。
赤ちゃんがね、いるよ。
まだ小さくてわかんないけど、もう少ししたら見えるようになるからね。
おめでとうございます。
外でヤキモキ待ってるパパも呼んであげよう。」
え…嘘…本当に!?
看護師さんに呼ばれた黒曜さんが、すっ飛んできた。
「輝っ!先生、輝はっ!?どうなんですかっ!?」
「まあまあ、落ち着いて話を聞いてね。
須崎さん、おめでとうございます。
あなた、パパになりますよ。」
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