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困惑①
どのくらい寝てたのだろうか。
開いたドアの隙間から話し声が聞こえてくる。
「…からな、お前に弟か妹かまだどっちかわからないけど、兄弟ができるんだよ。
銀波はお兄ちゃんになるんだ。」
「…え?…僕が?…お兄ちゃんに?
ホント?黒曜、本当に僕、お兄ちゃんになるの?」
「うん。だからさ、輝は『つわり』って言って、赤ちゃんを迎えるために身体が変わっていくから、気持ち悪くなったり、落ち込んだり、いろいろすると思うんだけど、見守ってあげてほしいんだ。
銀波も、甘えたいだろうけど、輝の身体が一番だから、ちょっとの間我慢してほしい。
飛びついたり、お腹に突進したり…っていうのはなし。
いいか?」
「…うん、わかった。
ママと赤ちゃんのためだね?」
「いい子だ、銀波。
俺も一緒に我慢するから。男の約束だぞ。」
「うん、約束!」
ゆーびきーりげーんまーん
うーそつーいたーら はーりせーんぼーんのーます
ゆーびきったぁ!
「黒曜、僕、赤ちゃん抱っこするんだ!」
「ははっ!まだまだ先だよ。頼むな、お兄ちゃん!」
「うんっ!」
黒曜さんも我慢するんだ。
何だかおかしくなって、起き上がると二人の元に行った。
「シルバ、お帰り!」
「ママっ!ただいまっ!…あ…」
俺に飛びつこうとしたシルバが躊躇して、固まった。
「シルバ、どうしたの?」
「…だって、“飛び付くのなし”なの。」
「じゃあ、ゆっくりとハグしよう。
おいで!」
シルバは一旦黒曜さんを見て、彼が微笑みながら頷くのを確認すると、おずおずと俺に近付いてきた。
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