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困惑④
俺は堪らない気持ちになって、顔を覆いその場に蹲ってしまった。
「輝?」
それに気付いた黒曜さんが、俺の側に寄ってきた。
ふわりと肩を抱かれた。
風呂上がりの少し湿った逞しい肌が触れ、ボディソープと体臭が合わさった官能的な匂いが俺を包む。
「どうした?気分でも悪いのか?」
俺は力なくふるふると首を横に振った。
じわりと目に涙が溜まってくる。
「……かな…」
「ん?何?」
「…嫌なことだったのかな…
…シルバが悲しんでる。
『ママは赤ちゃんのママだけど、僕のママなんだね』
って言われた…
この子に俺を取られると思ってるのかな。
シルバは今まで通り俺達の大切な子で…それは絶対に変わらないのに…
俺達はこの子ができてうれしいけれど、シルバにとっては嫌なことだったのかな…」
黒曜さんに訴えながら、ぽろぽろと涙が溢れてくる。
「よいしょ、っと。」
黒曜さんは軽々と俺を抱き上げると、そのままベッドへ運んで行った。
そして俺をそっと下ろすと、部屋を出て行ってしまった。
しばらくして、トレイに何かを乗せて黒曜さんが戻ってきた。
「輝…ホットミルクだ。
熱いから気を付けて…飲める分だけでいいから。」
「…ありがとうございます。」
カップを受け取って胸の前で抱えた。
甘い香りと温もりが、じんわりと手の平に伝わる、
黒曜さんは俺の横に座ると、肩に手を回し
「大丈夫だよ。
銀波は母親と別れてから、俺と二人っきりでここで過ごしてきた。
俺なりに愛して育ててきたつもりだったんだが…
輝と出会って、愛され守られる、何よりも甘える心地よさを初めて知ったんだ。
銀波の心に足りなかったものを輝が埋めてくれたんだ。
それが奪われると勘違いしてただけだよ。」
俺の頭を撫でながら黒曜さんが話しかけてくる。
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