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困惑⑤

「でも…でも…」 「大丈夫だ。 あの子は幼いけれど、それを受け止めようとしているよ。 『自分が愛されてる』という確固たる思いを持って。 『愛される』存在から『愛する』立場へ。 それは、あの子と出会ってから、輝がずっと注いでくれた愛情だ。 輝、あの子を愛してくれてありがとう。 今は戸惑いの方が大きくて、落ち込んだり泣いたりしてるかもしれないが、大丈夫だ。 だから…泣かないで…」 「…俺こそ…ありがとうございます…」 黒曜さんの胸に頭を預け、じっとその体温を感じていた。 コンコン 突然、ノックの音がした。 シルバ!? 黒曜さんは俺の頬にキスすると、悪戯っ子のような顔をして俺から離れると、ドアに向かった。 「銀波、入っていいよ。」 扉の側には、シルバが立っていた。 「シルバ!どうしたの?」 黒曜さんに招き入れられて、おずおずと入ってきたシルバは俺の側に近付いてくると、思い切ったように口を開いた。 「ママ!…僕、僕、ママが大好きっ! 僕、ママと赤ちゃんを守る強い子になるんだ! だから…心配しないで元気な赤ちゃんを産んでね。 僕、ちゃんと面倒見るから!」 「シルバ…」 もじもじしながらも、俺の目をしっかりと見つめ、頬を紅潮させて宣言するその姿がいじらしくて、愛おしくて… 俺の手の中のカップを黒曜さんがそっと受け取ってくれた。 滑るようにベッドを下りて、シルバを抱きしめた。 「シルバっ! シルバ…俺達の大切な息子…シルバは今のままでいいんだ。 大好きだよ…」 「…ママ…ママ、大好き…」 えへへっ と笑って、俺の頬にキスした天使は 「お休みなさいっ!」 と元気よく言って、ドアをパタンと閉めて出て行った。

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