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困惑⑥

黒曜さんは、ぼおっと立っている俺を促して、ベッドに連れ戻した。 「どうしてシルバが?」 「さっき話してきた。 『ママは自分のことを“愛してる、大好き”って言ってくれたけど、本当の自分の子供の方がかわいいに決まってる。 大切に思ってくれてるのはわかってる。 でも、ママは僕のママだったのに』 って。 銀波は、赤ちゃん…本当の子供に、大好きな輝を取られると思ったんだ。 血の繋がらない自分は他人だ って。 そうじゃない。それは違うよ、って。 俺と輝の気持ちをきちんと話したんだ。 暫く考えていたよ。あの子なりに。 落ち着いたら今夜でも明日でも明後日でも、銀波の気持ちを言いにおいで って伝えたんだ。 自分の中で決着をつけたんだろう。 だから、さっきここまで来たんだ。」 「…そうだったの…それで… 黒曜さん、ありがとうございます…」 俺は黒曜さんに抱きついた。 「俺は…シルバもこの子も同じように大切です。 シルバ…俺とこの子を守ってくれるって…」 嗚咽する俺をそっと抱きしめてくれる黒曜さん。 「ほら…目が腫れてしまうぞ。 擦っちゃダメだ。 泣いてばかりじゃ、目が溶けてしまう。 待ってて。何か目を冷やす物持ってくるから。」 瞼にそっとキスをすると、俺から離れて行ってしまった。 目を擦るのをやめ、ティッシュで目を押さえた。 あんなに幼い子なのに。 自分で考えて、自分がどうしたいのか、俺達に何をしたらいいのかをちゃんと考えたんだ… その健気さに胸が痛んで、またじわりとティッシュが濡れてきた。 黒曜さんが濡らしたタオルと冷え◯タを持ってきてくれた。

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