201 / 337

困惑⑦

またえぐえぐと泣いている俺を見て、黒曜さんは頭を撫でてくれ、ティッシュを外して冷たいタオルを目元に当ててくれた。 冷んやりと心地よいタオルに、熱っぽさが移っていく。 「…輝は優し過ぎる…」 ボソリと黒曜さんが呟いた。 え? 視界が寸断されてるから、黒曜さんの表情はわからない。 でも、それは揶揄いでも呆れでもなく、優しい声音だったことに、俺はホッとしていた。 「…俺は『普通』だと思ってますけど?」 少し拗ねた口調で返すと、クスクス笑いながら 「…そうだな、ごめん、ごめん。」 と、髪の毛にたくさんキスされた。 おデコにも手を添えられ 「やっぱり少し微熱があるな…」 ぶつぶつ独り言を言いながら、冷え◯タを貼ってくれた。 甲斐甲斐しく、タオルを冷たい物に交換してくれる黒曜さん。 「…もう、大丈夫ですから。 黒曜さんの手が冷たくなってます!」 「いや、もう少しだけ…」 黒曜さんの胸に背中を預けてもたれ掛かり、そっとお腹に手を当てた。 心地良い温もりが背中から全身に広がっていく。 本当に…ここにいるんだね。 そうだ! 仕事…ちゃんと考えなきゃ! 少しでも家計の足しになればいいから、やっぱり仕事は続けよう。 でも、家事に支障をきたしたり、シルバに負担が掛かるようなら、すっぱりと退職する。 俺はそう腹に決め、タオルを取り振り向くと、ボヤけた視界のまま、黒曜さんに宣言した。 「黒曜さん、俺、事務に移って、パートとして仕事は続けたい! もし、家事やシルバに影響があったら、その時は退職します。 だから…協力お願いしますっ!」 黒曜さんは俺をぎゅっと抱きしめ 「輝が望むように…俺はどれだけでもサポートするよ…」 うれしい言葉が降ってきた。

ともだちにシェアしよう!