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困惑⑦
またえぐえぐと泣いている俺を見て、黒曜さんは頭を撫でてくれ、ティッシュを外して冷たいタオルを目元に当ててくれた。
冷んやりと心地よいタオルに、熱っぽさが移っていく。
「…輝は優し過ぎる…」
ボソリと黒曜さんが呟いた。
え?
視界が寸断されてるから、黒曜さんの表情はわからない。
でも、それは揶揄いでも呆れでもなく、優しい声音だったことに、俺はホッとしていた。
「…俺は『普通』だと思ってますけど?」
少し拗ねた口調で返すと、クスクス笑いながら
「…そうだな、ごめん、ごめん。」
と、髪の毛にたくさんキスされた。
おデコにも手を添えられ
「やっぱり少し微熱があるな…」
ぶつぶつ独り言を言いながら、冷え◯タを貼ってくれた。
甲斐甲斐しく、タオルを冷たい物に交換してくれる黒曜さん。
「…もう、大丈夫ですから。
黒曜さんの手が冷たくなってます!」
「いや、もう少しだけ…」
黒曜さんの胸に背中を預けてもたれ掛かり、そっとお腹に手を当てた。
心地良い温もりが背中から全身に広がっていく。
本当に…ここにいるんだね。
そうだ!
仕事…ちゃんと考えなきゃ!
少しでも家計の足しになればいいから、やっぱり仕事は続けよう。
でも、家事に支障をきたしたり、シルバに負担が掛かるようなら、すっぱりと退職する。
俺はそう腹に決め、タオルを取り振り向くと、ボヤけた視界のまま、黒曜さんに宣言した。
「黒曜さん、俺、事務に移って、パートとして仕事は続けたい!
もし、家事やシルバに影響があったら、その時は退職します。
だから…協力お願いしますっ!」
黒曜さんは俺をぎゅっと抱きしめ
「輝が望むように…俺はどれだけでもサポートするよ…」
うれしい言葉が降ってきた。
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