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困惑⑧

それから俺達は、お互いを思いやるように抱きしめ合って眠りについた。 俺は…まだ興奮冷めやらず、次から次へと思いが浮かんで寝付けなかった。 仕事のこと、家事のこと、そしてシルバの思い… ぐるぐると巡る思考は、俺を中々休ませてはくれない。 もぞっと動くと、黒曜さんが声を掛けてきた。 「輝?眠れないのか?」 「ごめんなさい!起こしましたか?」 「いや…うれしくてうれしくて、眠れなかったんだ。 子供みたいにワクワクしてさ。 俺達四人でピクニックや遊園地に行きたいな。 テーマパークも絶対行かなきゃ。 海にも連れて行きたいし、キャンプもいいな。 銀波にしてやれなかったことをみんなで体験したいな。 …なんて思ってたら眠れなくなった。」 ふふっと笑う黒曜さんにぴったりくっついて 「…シルバにもたくさんいろんなことを体験させてあげたい…人狼としての誇りを持って。 一人じゃないんだ、シルバの周りには俺達だけじゃなく、見守って愛してくれる大勢の人達がいるんだってことをちゃんとわかってほしい。 そして…俺達みたいに、番と幸せになってほしい…」 「…うん、そうだな。 俺はずっと一人で生きていくんだと思ってたけど、こんなキュートでしっかり者の番に巡り会えるなんて。 一生分の運を使い果たしたよ、きっと。 でも、それ以上に価値のあることだから。 俺は輝と番になって本当に幸せだ。 ありがとう、輝。」 「黒曜さん…俺も…俺も幸せです…」 ちゅっ と口付けられて、恥ずかしい反面、幸せ過ぎてどうにかなりそうだった。 赤く染まった頬も動揺する顔も、暗闇でも見えるその青い目に映っているはず。 「おっ、お休みなさいっ!」 温かな胸に顔を埋めて、目を瞑った。 「ふっ…お休み、輝。」 頭を撫でられ、次第に瞼が落ちていった。

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