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報告①
翌朝、いつも通りに朝ご飯と弁当の準備をして、まずシルバを起こしに行く。
「シルバ!おはよう!さあ、準備するよー!」
「…ん…ママ、おはよう…」
目を擦りベッドから這い出してくるシルバを抱き留め、ほっぺにおはようのキス。
「へへっ。ママ、だぁーいすき!」
「ふふっ。シルバ、だぁーいすき!」
おデコをくっ付けあってクスクス笑い手を繋いで、今度は黒曜さんを起こしに行く。
「黒曜!おっはよー!」
ぼふっ
「ぐえっ!…銀波…優しく起こせよ…」
「黒曜さん、おはようございます。」
「輝ぅ…痛いよ…毎朝、この起こし方は止めさせてくれ…」
「だってぇー、黒曜、起きないもん!」
「優しくちゅーするとか、キスして起こすとか…」
「はいはい。早くしないと遅刻しますよ。」
賑やかな朝の風景。ドタバタと慌ただしく準備を済ませ、俺が先に出勤する。
「行ってきます!」
「あ、輝、待って!」
シルバにハイタッチをして、玄関で靴を履きかけた俺を黒曜さんはそっと抱きしめて
「いいか、慌てて走らないこと。
仕事のことは、今日上司に報告して相談すること。
帰りは迎えに行くから、連絡して…」
ちゅっ
青い瞳がゆらゆらと揺れている。
見つめ合って思いを交わす。
「はい…行ってきます。」
あー、恥ずかしい、恥ずかしい!
朝からこんな甘い…
いつもと同じ朝なのに、いつもと違う俺。
お腹の中に、俺達の分身がいる。
そう思うだけで、何だか少し強くなれる気がした。
「おはようございます。」
いつもの社内。
中澤課長のデスクへ一直線。
「課長、おはようございます。昨日もご迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
朝から申し訳ありません。今後のことで ご相談が…」
「おう。わかった。」
二人で会議室へ向かう。
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