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報告④
きっかり定時に黒曜さんが迎えに来た。
うれしくって駆け出しそうになる俺を黒曜さんが眼力で制した。
そうだ!走っちゃダメ!
ドアを開けてもらい、助手席に滑り込む。
「黒曜さん、ありがとうございます!」
「輝…走っちゃダメだ。いいね?」
「…はい、ごめんなさい。」
「ママ!お帰りなさい!」
「シルバ!?シルバも一緒!?ただいま!」
「今日は黒曜が、早くにお迎えに来てくれたの。
あのね、あのね、今日はお誕生会だったの!
太陽君、今月のお誕生日のチームでね、王様の冠を被ったんだよ!
おやつはね、ケーキだった!」
「へぇ…お誕生会か。
太陽君はシルバより少しお兄ちゃんなんだね。
お誕生日の子は冠を被るんだ。
ケーキは美味しかった?」
「うん!僕は来月!
真ん中の席に座って『ハッピーバースデー』の歌を歌ってもらうんだ。
ケーキも美味しかったよ!
ねぇ、ママ…」
「ん?なぁに?」
「僕、太陽君に何かプレゼントしたい。」
「お誕生日の?そうだね、何がいいかな…
お金を出して買える物より、シルバが何か作った物の方がいいかもしれないね。
…シルバの得意なお絵かきは?
太陽君を描いて、額に入れて…」
「僕、それする!額って何?」
「お家に、黒曜さんの賞状入れて飾ってあるだろ?あれだよ。
…そうだ!
黒曜さん、このまま100均に行ってほしい!
シルバと一緒に買い物したいんだ。
値段の張る物じゃなければ、受け取ってもらいやすいでしょ?」
「…そうだな…俺も一緒だから大丈夫か…
よし、行こう!
買い物も初めてだよな、銀波。」
「うんっ!僕、耳も尻尾もちゃんと隠すから!
ママの側、離れないようにするから!」
いそいそと、パーカーで耳を 尻尾をズボンに捻じ込み隠すシルバがいじらしかった。
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