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報告⑦

「みんながね、『輝』『輝はかわいいねぇ』 『輝が笑った』なーんて、一から十まで輝中心になっちゃったの。 それまでは浩司が何でも一番で、みんなの愛を一身に受けていたのに、全部、輝に取られた と思ったんでしょう。 ある日、いつものように輝をあやしていると、突然浩司が 『輝をゴミ箱に捨てて下さい!』 って泣きながら言うの。」 ゴミ箱!?俺を!? 「そこでハッと気付いて、私達一人ずつあの子を抱きしめて、それぞれに『浩司は偉い』『浩司大好き』って話したの。 『今まで我慢して偉かったね。 浩司はちゃんとお話しもできるし、トイレもお風呂も一人でできるでしょ? 流石立派な男の子だね。 輝は赤ちゃんで何一つ自分でできないから、お世話してやらなきゃダメなの。 だから、お兄ちゃんの浩司が手伝ってくれなきゃ、輝、一人では生きていけないんだよ。 一緒に助けてね。』 って。 それから輝より先に浩司のことを優先してると、『お兄ちゃんだ』っていう自覚が出たのか、輝を物凄くかわいがってくれるようになってね。」 「…そうだったの…俺、ゴミ箱行きだったんだ…」 「だから、シルバちゃんのことは最優先にね。 でも、あの子は聡い子だから、大丈夫よ。」 そんな話をして、また連絡するから、と電話を切った。 ため息をつく俺に黒曜さんは、何とも言えない顔をして言った。 「輝、ゴミ箱に行かなくて良かったな…」 「…何か兄さんに電話しづらい…」 「大丈夫さ。きっと忘れてるよ。」 黒曜さんはそう言って、携帯を操作した。 「もしもーし。」 「義兄さん、黒曜です。今、電話よろしいですか?」 「うん、いいよ、元気?」 「ええ、お陰様で。 あの…実は……」 妊娠のことを話すと母と同じ反応で…俺達は耳がおかしくなるかと心配するほどの興奮ぶりだった。

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