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ストーカーside:黒曜②

「とんでもない!こちらこそですよ。 ところで…」 園長先生の声のトーンが落ちた。 「もう既にお聞き及びかもしれませんが、人狼の子供の誘拐事件をご存知ですか?」 「はい。義兄(あに)…輝のお兄さんから聞きました。先日も事件があって、犯人は捕まったけど詳細がわからないと。」 「…そうなんです。在園児の保護者には以前から通達してるのですが、須崎さんは初めてなので、直接お伝えしますね。 幸いなことに、まだうちの園では被害がないのですが、他所では未遂や連れ去りが発生しています。 最初は単なる噂でした。 けれども、こう立て続けに被害が出ると、国家単位での策謀も疑いを持たれています。 見知らぬ車や匂い、人影… ハッキリしたことがわかるまで、十分シルバちゃんの周囲に気を配って気を付けて下さい。 私達も最善の注意を払っていますので、どうかご協力をお願いします。」 「…わかりました。 輝にも気を付けるように伝えます。 ありがとうございました。」 「銀波ちゃんに会って行きますか?」 「いいえ。…こっそり見てもいいですか?」 「もちろんです!どうぞ。」 園長先生の後について、ガラス窓からそっと中を窺い見る。 みんなそれぞれに積み木で遊んでいた。 銀波…銀波は…いた!! 隣にぴったりと太陽君がいる。 お互いに受け渡しをして、一緒に何かを作っていた。 ははっ、微笑ましい… 太陽君が甘えるように銀波に身を寄せると、うれしそうに頭を撫でて銀波が笑っている。 あぁ…本当に番なんだなぁ。 俺は窓から離れると 「よろしくお願い致します。」 と告げて保育園を後にした。

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