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ストーカーside:黒曜③
やはり噂ではない。
現実に起こっていることなんだ。
今まで以上に気を張って行動しなければ。
村を出てしばらくすると、一台の黒い車が一定の距離を空けて付いてくるのに気が付いた。
まさか。
用はないがコンビニに寄る。
減速して左折した。
バックミラー越しに確認すると、その車は何事もなく通り過ぎて行った。
なんだ。気のせいか。
一度降りてコーヒーを注文する。
カップを手渡され、機械にセットして、何気なく外を見やった。
え…嘘だろ…
さっきの車が、俺が停めた反対側の駐車場に入って来るのが見えた。
ピーッピーッピーッ
コーヒーが出来上がった音がして、慌てて蓋をした。
変な汗が出て、心臓が早鐘のように鳴り始めた。
偶然にしては、でき過ぎている。
まさか、銀波が標的に!?
確認しなければ。
俺はコーヒーを持つと、車へ向かった。
相手は降りてくる気配がない。
やはり、俺達が狙われてるのか?
巻いても恐らく自宅は突き止められているだろう。
輝!?輝は大丈夫なのか?
電話!!!
急いで画面を起動させ、輝に電話を掛ける。
視線は黒い車をロックしている。
呼び出し音が長く感じる。
頼む、出てくれ…
『もしもし?黒曜さん?』
いつもの輝の声に、ホッとして脱力した。
「あぁ…輝…仕事中に済まない………今いいか?」
『移動中ですけど、大丈夫ですよ。
どうかしましたか?声が何だか…』
「俺は大丈夫だ。変わりはないか?」
『ふふっ。心配いりませんよ。大丈夫ですから。』
「それならいいんだ。気を付けて…」
『はいはい。本当に、心配性なんだから…
後で…お迎えお願いしますね。』
「あぁ。後でな。無理するなよ。」
『はい!あ…会社に着いたので切りますね!』
「わかった。じゃあ。」
じゃあ…と電話が切れた。
黒い車はまだ動かない。
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