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ストーカーside:黒曜④

間違いない。 ターゲットは『俺達』だ。野性のカンが警告音を発している。 誰に言えば…そうだ、義兄さん! 俺は急いで電話を掛けた。 しばらくして電話に出た義兄さんに、間違ってたら申し訳ないが…と前置きした上で、車のナンバーと車種、場所と時間を伝え、調べてもらうようにお願いした。 義兄さんは 「その近くに喫茶店ある? パソコンを立ち上げて、執筆するフリをして。 知り合いの警察官にすぐ連絡して調べてもらうから。 俺に任せて!」 お願いしますと告げて、電話を切った。 エンジンを掛け、ゆるゆると車を動かし道路へ出ると…ついてきている! 言いようのない怒りと恐怖と焦りとで、ハンドルを持つ手がじっとりと湿ってくる。 おい、黒曜、しっかりしろよ。 自分にハッパを掛けて、いつもと違うコーヒーショップへ車を停めた。 「いらっしゃいませー」 オーダーを済ませ、その間も外の様子をうかがう。 やっとコーヒーを受け取ると、外が見渡せる眺めのいい場所へ進み、席を確保した。 あ…目の前をあの車が通り過ぎた。 一瞬、運転手と目が合った気がした。 急いでパソコンを立ち上げる。 間もなく、携帯のバイブが震えた。 義兄さんだ! 「義兄さん!?」 「黒曜君!それ、盗難車だよ!」 「え…?盗難車?どういうことですか!?」 「お手柄だったね、黒曜君。 …誘拐組織に…何か繋がるかもしれない。 今、パトカーが挟み撃ちにするために向かってる。 運転車捕まえたら吐かせてやるって、意気込んでるから、すぐに捕まるよ。 とにかく、身辺に気を付けて。 今日は家に帰らない方がいいかもしれないね。 うちに来ても大丈夫だよ!」

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