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ストーカーside:黒曜⑤

俺は慌てて断った。 「そんな…お義兄さんに迷惑は掛けれません。 ホテルにでも行きますから、大丈夫です!」 「そう言わずに…うちはセキュリティもしっかりしてるし、安心だよ。 それに、久し振りに君達と話もしたいし… ね?いいだろ?そうしようよ!」 「…じゃあ、お言葉に甘えて…一晩よろしくお願いします。」 「オッケー!一晩と言わず、落ち着くまでいいよ。 遠慮する人もいないからね… 今、マンションの場所を送るから。 今日は定時に上がるから、18時には帰ってるよ。 晩ご飯は何か買ってくるから手ぶらでおいで。」 「何から何まで…申し訳ありません…」 「なーに言ってんだよ。水臭いなぁ、家族じゃないか。 遠慮はなし! あ、今の犯人の詳しいことがわかったら、また連絡するよ…油断はしないでね。」 「はい、よろしくお願いします!」 ホッとして電話を切った。 遠くでサイレンの音がいくつも重なって聞こえる。 まさかカーチェイスでもしてるのか!? 耳を澄ませば、それはやがて静かになっていった。 捕まったか… それにしても…どこで情報が漏れたんだろう。 銀波の姿を誰かに見られたんだろうか!? いつ、何処で!? 回転寿司?100均? それとも村にスパイが!? ゆっくりと記憶を辿っていく… 何か…何か見落としてることはないか… 何か…嫌な臭いに気付いたことはなかったのか… 思い出せ…黒曜、思い出すんだ… 目を瞑り神経を集中させる。 ゆっくりと逆回転の再生が始まった。 ここに来るまでの動きがスローに流れていく。

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