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ストーカーside:黒曜⑥
滑り込んだ喫茶店のガラス窓越しに見えた運転手の顔…
確かに俺を見ていた。
輝の無事を確認した時に、黒い車が俺とは反対側の駐車場に停まった。
コンビニを一旦通り過ぎて、また引き返していた。
村を出て暫くしてから、黒い車がついてきているのに気付いたんだ。
村に入る前は?
いや、怪しい車はいなかった。
家を出た時は?
その時も、気になる車はなかったはず。
今日じゃない…じゃあ、何処で!?
遡る記憶…
三人で100均に買い物に行った…あの時か!
俺は輝の妊娠に浮かれてて、周りをよく見ていなかったが…
そう言えば、誰かに見られているような気はしていたが『男二人が子供を連れてるのはどんな関係か』という好奇心の視線…だと思い込んでいた。
それ以外に考えられない。
もっと気を付けておくべきだった。
今更悔やんでも仕方がないのだが。
携帯のバイブが着信を知らせる。
義兄さん!
「もしもしっ!?」
「黒曜君!犯人、捕まったよ!運転手ともう一人。
今から事情聴取に入るそうだ。
少しずつだけど、進んでる。
黒曜君、お手柄だったね!ありがとう!」
「良かった…いえ、俺は別に…
お義兄さん、こんな状況で家にお訪ねしても大丈夫なんでしょうか?
お義兄さんまで狙われたら…」
「俺は大丈夫だよ。安全じゃなかったら家に呼んだりしない。気にしなくてもいいから。
今晩、お泊り待ってるからね!
詳細はその時に…じゃあね!」
良かった…捕まったのか。
でも
恐らく実行犯は下っ端だ。まだ安心はできないはず。
こちらの素性が知られている以上、下手なことはできない。
…こんな状況で、お義兄さんの家に行っても本当に大丈夫なんだろうか?
あの、確信に満ちた『大丈夫』はどうしてなんだろう…
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