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ストーカーside:黒曜⑦

釈然としないまま車に戻り、保育園に連絡した。 園長先生を呼んでもらうと、今の事の次第を伝えた。その上で、俺が銀波を迎えに行ってもいいか尋ねると 「…わかりました。大変な目に遭われたんですね。 いつも通りにお迎えにいらして大丈夫です。」 「皆さんにご迷惑は掛からないでしょうか?」 「いつかはこのようなことがあると、覚悟していますから大丈夫です。 セキュリティも今まで以上に強化します。 須崎さん、人狼は黙ってやられっ放しではありませんよ。 私達も、私達のルートを使って誘拐犯を探っています。 絶対に根絶してみせますよ。」 何とも頼もしい答えが返ってきた。 「申し訳ありません。では、いつも通りに迎えに行きますので、よろしくお願いします。」 「あなたが謝る必要はありませんよ。 油断大敵。注意して下さいね。」 「はい」と答えて電話を切った。 大きく息を吐いて、バックミラーで辺りを確認した。 …異常なし。 周囲に気を付けながら、しばらく車を走らせた。 今のところ、怪しい動きの車はない。 そのまま高速に乗り、海が見えるパーキングエリアへ向かう。 来年の夏は、家族四人で海水浴だな。 パラソルに浮輪に、ビニールシート。 もちろん、水着も買わなきゃ。 思いを巡らせながら、景色の良い所で駐車した。 エンジンをかけたまま、周囲を見渡す。 不審車はない。少し窓を開けて、エンジンを切った。 ホッと息を吐くと、大きく伸びをした。 そしてパソコンを立ち上げ、小一時間程思い浮かぶままの文章を打ち込んだ。 輝と一緒になってから、不思議なことに筆が進む。いや、実際にはペンは持ってないから、そう言う表現は相応しくないのだが。 気が付くと、とうに昼を過ぎていて、腹の虫も鳴き出した。 フードコートで軽く済ませて、車に戻った。 無性に、輝に会いたくなった…

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