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ストーカーside:輝②
俺は片手でお腹を押さえ、片手でハンガーフックをしっかりと握っていた。
じわりと変な汗が出ている。
心臓が早鐘のように鳴っている。
瞬時に血圧も上がり、喉がカラカラに乾いて引っ付きそうになっている。
この状況は何!?
俺達、普通の営業マンだよ!?
何で訳もわからず、尾行どころか追い掛けられて、覆面パトまで現れて…
「おっ、応援部隊登場!後は彼らに任せよう。
減速するよ!」
ウインカーを出して、花巻が走行車線に戻っていく。
遠くに赤い点滅とサイレンの音が…白バイだ!
たちまち覆面パトとともに白のセダンに追い付くと、取り囲んで停車させた。
「流石仕事が早いねぇ。
さぁ、俺達は一旦社に戻るよ。
葛西君、大丈夫?」
「…何とか…」
車から降りようとして、足元がふらついた。
すかさず花巻に腕を掴まれ、転倒を免れた。
「大丈夫じゃないじゃん。
要、ヤキモチ焼くなよ。よっ…と。」
ふわりと抱き上げられ
「はっ、花巻っ!?俺、大丈夫だからっ!
下ろしてっ!!」
「暴れるなよ、ママさん。
腰抜けてまともに歩けやしないだろ?
言うこと聞いて!」
「相手が葛西君なら嫉妬したりしないよー。
浩一、後で俺もね♡」
「ばーか…帰ってからな。」
姫抱きにされた羞恥心と、何気にイチャつく二人の会話に当てられて、顔を赤くしたまま、俺は医務室に運ばれた。
「あらー、どうしたの?…何かあった?」
「ちょっとトラブルに巻き込まれて…
先生、葛西君が自分のことより心配なのは『この子』だから、すぐ診てあげて!」
「オッケー!そこの寝台に…そう、ゆっくりとね。
お二人さんは外で待っててね。
はい、葛西君、お腹出して」
戸惑う俺を無視して、松村先生は次々と指示を出す。
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