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ストーカーside:輝③

俺の動揺をやっと察してくれたのか、松村先生は 「心配しないで。俺も人狼だから。 ほら。」 見る間に大きな耳が、ひょっこりと現れた。 それを見て、やっと緊張が少し取れた。 「…先生も…ですか。」 「そう。だから安心して任せて! タオル掛けるね…ジェル塗るよ… うん!元気元気!順調だね。 葛西君、心配いらない。大丈夫だよ。」 全身の力が抜けた。 「…よかった…」 「人狼の子は強いからね。 少々のことでは、へっちゃらだから、ママは どーんと構えててね。」 ジェルを拭き取りながら、先生が眉間に皺を寄せて 「ところで何があったの? 上は大忙しだったみたいだけど。」 実は…と、俺は服を直しながら、さっきのカーチェイスの様子を松村先生に聞かせた。 先生は黙って聞いていたが 「おーい!お二人さん、入っていいよー!」 その呼び声に、飛び込んで来た二人は口々に 「先生、赤ちゃんは?大丈夫だよね?」 「葛西君、何ともない?赤ちゃんは?」 多重音声みたいに言うのを先生が制して 「葛西君も赤ちゃんも無事! 乗ってたのが君達二人で良かったよ。 そうでなければ、犯人に捕まっていたと思う。 花巻君のドライブテクニックはF-1ドライバー並みだから。 …狙われたのは、恐らく…葛西君、君だよ。」 「えっ!?俺っ!?何で!?どうしてっ!?」 「…君は人狼で、お腹に赤ちゃんがいる。 それを狙われたんだろう… 君の妊娠を知っているのは、ご家族はもちろん、社内の一部。 …どこから情報が漏れたのか…それもたった一・二日で。」 「…スパイがいるってことですか?」 花巻が低い声で尋ねた。 「一番に情報が入るのは病院…ちょっと失礼。」 先生が何処かへ電話し始めた。

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