225 / 337

ストーカーside:輝⑦

尊敬の目で課長を見ていると 「そんな顔されたのは入社して初めてだ。」 と頭を軽く小突かれた。 「だって…課長はいつもチャラくて、いい加減…っうおっと……コホン…ゆるキャラ的な存在だったから… こんな真面目でイケてる課長は初めてですからっ!」 「…いつも俺のこと、そんな風に思ってたのか…ショック… 家族だけじゃなくて、部下にもそう思われてたのか…」 ガックリと肩を落とす課長を遠巻きで見ていた花巻と森田が、声を堪えて肩を震わせて笑っていた。 「花巻ぃ!森田ぁ!」 「「はいっ!!」」 「お前らも…そう思ってたのかぁ?」 「いいえっ!俺達は“真の課長の姿”を知ってますからっ!なっ、要?」 「そうそう、いつものアレは、身内をも欺く“仮の姿”だって知ってますからっ! ご家族も本当は、きっとそう思ってらっしゃるはずですよ! ねっ、ねっ、松村先生?」 うんうん と頷いてご満悦な課長は、呆れ顔の松村先生に、どうだとばかりに顎を突き出し、胸を張った。 「…そういうところが『お調子者』って言われるんだよ、バーカ。 黙ってりゃあ、少しはマシなものを。 ぺらぺらぺらぺら喋りやがって。 モコをみならえ!モコを!」 えっ、えっ、松村先生? そんなこと言っても大丈夫なんですか? オロオロとする俺に、森田がこっそりと 「いつもの痴話喧嘩だから気にしないで。」 と宣った。 痴話喧嘩…痴話喧嘩?…恐る恐る聞いてみた。 「あの…お二人は同期?先輩後輩?同じ学校出身?」 課長は苦虫を潰したような顔で俺を睨み、松村先生は口をぽかっと開けて俺を見ていたが、そのうち、大笑いし始めた。 俺はどうしていいのかわからず、二人を交互に見つめるばかりだった。

ともだちにシェアしよう!