232 / 337

護り⑤

黒曜さんは俺を抱きしめたまま 「暫くは、お義兄さんの所で生活させてもらう。 そこは、人狼専門のマンションで、身元の確かな人しか住めないそうだ。 そこにいる、花巻君と森田君も同じマンションだから、出勤する時に一緒に行ってもらえるから、その点でも安心だ。 帰りは俺が迎えに来るまで待ってて。 お義兄さんも是非そうしろ と言ってくれてる。 緊急事態だから、甘えてそうさせてもらおうとお願いした。 荷物も勝手に選んで持ってきたから。 必要な物があれば言ってくれ。 取りに行くから。」 「黒曜さん……」 きゅう… 足元で小さな鳴き声がした。 シルバ!? 視線を下に落とすと、洋服の中に埋もれた銀色の塊がいた。 獣化してしまったシルバ… 「…シルバ…どうしたの?」 服を掻き分け抱き上げると、もう一度『きゅう』と鳴いて指を舐めてきた。 「ふふっ、擽ったいよ、シルバ。 チビになっちゃってどうしたの? …怖い?怖かったよね…でも、もう大丈夫。」 恐怖と安堵のバランスが崩れたのだろう。 チビ狼になったシルバを胸にぎゅっと抱きしめて、背中を撫でてやる。 この小さな温もりを絶対に護る! どんなことがあっても。 決意を込めて顔を上げると、黒曜さんの視線と打つかった。 何も言わなくても通じる想い。 黒曜さんが、そっとシルバの頭を撫でた。 きゅうっ シルバが鳴いた。 『僕、大丈夫!』そう言ってるみたいに。 俺たちの様子を見ていた森田が 「うわぁ…かわいいなぁ…ねぇ、抱っこさせてくれる? シルバちゃん、いいかな?」 「きゅん!」 恐る恐る輪を作る森田の腕の中に、シルバをそっと下ろした。 じっと森田を見つめる大きなシルバの目に 「思ってること何でも見透かされてるみたい… …そっかぁ…子供の獣化したのって、こんな感じなんだ… あったかーい…」

ともだちにシェアしよう!