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咆哮②

黒曜さんに訴えた。 「黒曜さん、課長に貰ったGPS! 俺達の携帯にアプリ入れてもらってる!」 「そっちも渡してある。花巻君達が追ってくれてる。」 動けないことにイライラが募る。 「輝、落ち着いて。銀波は絶対に俺が助ける。 だから、今は自分の身体のことを一番に考えて。」 「でも、でも…」 「素人が下手に動くと逆に捜査の邪魔になる。 今は…彼らに任せよう。」 ぐっ と拳を握り締める。 ぎりっと噛んだ下唇は、どこかが切れたのか血の味がしてきた。 情けない。こんな時に役に立たないなんて。 俺が本当に人狼で、本当に人狼の力があるのなら、シルバの匂いや鳴き声を聞き取ることはできないのか。 「…匂い…シルバの匂い… 狼はイヌ科だよね!?シルバの匂いを辿って探すことができるんじゃないの?」 「…それは俺がやった。 けど、すぐに雑多な匂いに掻き消されて、それに途中から全くわからなくなったんだ。 多分、車で連れ去られたんだと思う。 あんな人通りの多い所で、防犯カメラもあちこちにあるから、足取りはすぐにわかるだろうって、課長が言ってた。 余程焦ってたのか、見つからないという余裕があるのか、意図が全くわからないって。 …俺がもっと気を付けて運転をしていたら、こんなことには…」 「黒曜さんのせいじゃないっ! だから、だから、そんな顔しないで…」 「輝…」 「絶対に…絶対にシルバは助けるっ!」 コンコン 誰だろう。「はい。」 「輝っ!大丈夫かっ!?…黒曜君、君も…」 「兄さんっ!」 兄の後から続いて入ってきた美丈夫に思わず身構えた。 「あ、大丈夫!彼は…俺の恋人。警察官。 協力してくれるって言うから連れてきた。」 え…???恋人??? 「初めまして。水谷 芳樹(よしき)です。 自分も人狼です。 何かできることがあればと思って、無理について来ました。」

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