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咆哮④

「…何!?何か わかったの!?黒曜さん!?」 黒曜さんは俺をじっと見つめて 「壊されたキーホルダーが現場近くで見つかったそうだ。 その後の足取りは、防犯カメラにも映ってないそうだ… 全力を尽くすから…って…」 それを聞いた瞬間、全身の血液が逆流したような感覚に囚われた。 ウオォーーーーーッッ!!! 俺の声ではない声が、内側から溢れて部屋中に響いた。 俺は、ぶちりと点滴を引き抜くと、するりとベッドを降り、唖然とする黒曜さんと兄さんを置いて、部屋を飛び出した。 「輝っ!!!」 そのまま一気に階段を駆け上がり、屋上を目指す。 走っているうちに、前傾姿勢になり身体の筋肉が変わっていくのがわかった。 着ていた寝間着がボロボロと破れて吹っ飛び、四つ足の身体が自由に階段を飛ばし駆けて行く。 視界に入るのは真っ白の毛。 …獣化したんだ… 半開きのドアの隙間から身体を捻じ込ませ、辺りを見回した。 耳をピンと立て、鼻先を空に向けてシルバの声と匂いを探す。 …ダメだ…全然わからない。 誰でもいいから、シルバを助けて! シルバを見つけて! 無事な姿で俺たちの元へ返して! お願い! アオォーーーーーーーン アオォーーーーーーーン 思いを込めて、何度も何度も訴え吠える。 アオォーーーーーーーン アオォーーーーーーーン 月の光の中に、哀しげな願いを込めた遠吠えが吸い込まれていく。 お願い! 誰でもいい…どんな小さなことでもいい。 事故に遭って攫われたんだ! 知っている人がいたら教えて! 俺達の大切な家族が攫われた… シルバを…シルバを見つけて………… お願い…お願いします…

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