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咆哮⑥

中澤課長が屋上に駆け上がって来た。 「なんか凄いことに…須崎君、お兄さん! 警察に莫大な量の情報が集まってきてる! ん?…白狼……まさか…葛西君?」 信じられないものを見るように、しばらく無言でいたが、やがて 「…何て綺麗なんだ…」 と呟いた。 …後で思い出したのだが…それを聞いた黒曜さんがムッとした顔をしていたことは内緒にしておこう。 「とにかく! 人狼からの情報が半端ないんだ! どうやらイヌ達のネットワークにも共鳴してる。 間もなく、シルバちゃんの居所も割り出せるだろう。 葛西君…君がシルバちゃんを思う気持ちにみんなが応えてくれたんだ。 やったな!」 俺はヨロヨロと黒曜さんの足元に近付くと、へたり込んでしまった。 「輝!?輝、大丈夫か?? あぁ…こんなになるまで…ごめん、無理させて… お前の思いに人狼達が応えて協力してくれてるんだよ! …でも、お前獣化できたのか? 何て綺麗なんだ…」 黒曜さんはしゃがみこむと、俺の首に抱きついて、背中を優しく撫でてくれた。 それだけで、思い出した身体中の痛みが消えていくような気がする。 くうっ 掠れた声で鳴いて、黒曜さんの身体に擦り付いた。 鼻先を顔に こすり付けて、頬をペロリと舐めた。 黒曜さんはひたすら…俺を抱きしめ撫でてくれていた。 森田が息急き切って飛び込んできた。 「課長っ!見つけましたっ! 目撃情報多数ありっ! 今から我々も向かいますっ!」 「わふっ!」 「いや…葛西君は待ってて。その姿じゃ無理だよ。」 「ぐるるるるっ」 「…じゃあ、人間に戻ってくれる?」 困った。 戻り方がわからない。 黒曜さんが助け舟を出してくれた。 「元の人間の姿をイメージするんだ。 あっ!まだダメ!…裸のままだから。」

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