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咆哮⑦

上手く歩けない黒曜さんを支えるようにぴったりとくっ付いて、俺たちの中では猛ダッシュのつもりなのだが、必死で階段を下りていく。 …黒曜さん、自分は大丈夫だと言っておいて、スラックスで見えなかったけど右足骨折してたんだ。 俺も身体があちこちが痛むけれど、そんなものには構っていられない。 「輝、俺は大丈夫だから…ごめんな、お前を抱えて下りれたらいいのに… 不甲斐ない…ごめん、輝。」 そんなことない! と、くうっと掠れた声で鳴くと 「ありがとう。お前は優しい。」 と頭を撫でられた。 病室に着くと、鞄から俺の下着や服を出してくれた。 「あの車はぐちゃぐちゃになったから…取り敢えず、荷物だけ出してきてもらったんだ。 …大きく深呼吸して…そう。 自分の人間の姿をイメージして…」 黒曜さんの言う通りに大きく息を吸って吐いて、何度か繰り返し、俺の姿を思い浮かべた。 『戻れっ』 じわじわと身体が痺れてきて、ぶるっと身震いした瞬間、徐々に手の指が…全身の筋肉が伸び、後ろ足の膝が折れ、尖った鼻先が縮まっていく感覚がした。 「輝っ!すぐにこれ着てっ!」 慌てる黒曜さんに、何で?と首を傾げて見上げると 「お前…真っ裸で…目のやり場に困る…」 と真っ赤な顔で呟いた。 はっと気付いて、黒曜さんの陰に隠れるようにして慌てて出された服を身に付け、中澤課長達に 「早くっ!早くシルバの所へ連れて行って下さいっ!」 と叫ぶと、ため息をついた課長が 「大人しく待ってろと言っても言うこと聞きそうにないから… 仕方ない、森田!連れて行ってやれ!」 と言ってくれた。

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