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咆哮⑧

運転席に花巻、後部座席には俺と、俺の肩をしっかりと抱いた黒曜さんが乗り込んだ。 森田が運転する車には、兄さんと水谷さんが。 花巻が 「飛ばすよ。しっかりシートベルトしてて。 犯人の陣地に乗り込むからね。 それにしても…葛西君、君は凄いよ… 街中の、いや隣町や他の県まで、君の願いが届いてるんだ。 それに人狼達がみんな協力してくれてる。 警察の電話、ついにパンクしちゃったよ。 それに、今まで自分が人狼だなんて知らなかった人達にまで伝わったから、今頃プチパニック起こしてるぜ、みんな。」 最後の方は笑いながら言う彼に 「そんな…俺、夢中で… それに獣化するなんて思ってもなかった…」 黒曜さんがそっと頭を撫でてくれる。 『浩一っ、浩一、聞こえる?』 突然、無線から森田の声が聞こえた。 「あぁ、聞こえる。どうした?」 『犯人の親玉がわかった!』 「誰だっ!?」 『…シルバちゃんの…実の父親だ。』 「何だとっ?森田さんそれ本当ですかっ?」 黒曜さんが身を乗り出して叫んでいた。 「嘘っ…黒曜さん…………」 黒曜さんはギリギリと唇を噛み締めている。 妹の白磁さんとシルバを捨て、そればかりかその命を奪おうとした男…そいつが犯人だなんて。 どうして?何故今頃? 『詳しいことは後で!今までの人狼の子供の誘拐事件も、全てそいつが黒幕なんだ! とにかく、飛ばすよ!!』 「わかった!パトランプは使えないからな… ついてこいよ、要!」 『ラジャー!』 犯人にこちらの動きを悟られないために、サイレンも使えない。 「葛西君、須崎さん、飛ばすからしっかり掴まっててね! 行くよっ!」 花巻はそう言うと、アクセルを踏み込んだ。

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