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咆哮⑨
黒曜さんは俺の肩と腰を抱きしめ、真っ直ぐに前を向いていた。
凛としたその横顔を見ていると、愛おしい恋人を苦しめる輩に怒りが沸々と湧いてきた。
シルバの実の父親が犯人?
どうして?
何故シルバを狙う?
頭の中をぐるぐると思考が巡るが、そんなことより今は、シルバの救出の方が先だ!
カーチェイス宛 ら、花巻は上手く他の車を避けながら、ぐんぐんスピードを上げ目的地へ向かっていた。
どうやら港の方に向かっているらしい。
無言になった車内には、次から次へと無線の会話が飛び交っている。
『前島班、スタンバイオーケー!
いつでも踏み込めます!』
『池ヶ谷一班、到着しました!』
『同じく池ケ谷二班、到着!』
『海上どうなってる?』
『品川班、近藤班、船舶部隊配置につきました!』
『ヘリはどうだ?』
『飯島・伊坂・尾山班、航空部隊、ヘリ三機、上空にて待機中!』
『陸上部隊全十班、配置につきました!』
『よしっ!合図を待てっ!待機っ!』
「凄い…一体どうなってんの?」
思わず声に出てしまった。
花巻が
「人狼警察が集結してるんだ。
陸海空なんて、自衛隊みたいだろ?
この包囲網からは、絶対に逃げることはできない。
葛西君、須崎さん!
シルバちゃんは絶対に助けてみせるよ。」
花巻の頼もしい言葉にまた泣きそうになった。
俺は黒曜さんの服の裾を握りしめ、抱き寄せられるまま、彼に身体を預けていた。
そうでもしないと、感情がコントロールできなくて、頭がおかしくなりそうだったから。
シルバ!
絶対助けるから!
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