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人狼の村より…side:村長①

一日の仕事を終え、村長が帰り支度を始めていた時だった。 「何だか騒がしいな…」 窓を開け、ぴんと耳を大きくそば立てた。 その耳はもちろん狼のそれで… 「何?誘拐?…シルバ…シルバ?」 ドアを開け、同じく帰り支度を始めていた秘書達に尋ねる。 「みんな、あれ、聞こえるか?」 「はい!今その話をしていたところで…」 「『シルバ』って、最近保育園に入園したあの須崎銀波ちゃんのことか? 小橋さん家の太陽君と番だっていう…」 「そうだと思います。 まさか誘拐されたなんて…」 「緊急対策室を立ち上げる! 小橋さんに連絡! できるだけ情報を集めてくれ! みんな、残業になるが…頼むよ!」 「「「はいっ!!!」」」 途端に役所内の電話が鳴り始めた。 対応に追われる職員に『頼むよ』とジェスチャーで示し、村長自ら館内そして村内放送をかけた。 それからは大騒動だった。 情報が交錯する中、それらを精査して必要なもののみ警察へ提供する。 不安がる村民を宥め落ち着かせ、とにかく家から一歩も出ないようにと呼び掛けた。 第二、第三の誘拐者を出さないためにも、余計な手間は省きたかった。 そうこうするうちに、小橋さんが息急き切ってやって来た。 「銀波ちゃんが誘拐されたって本当ですか? 無事なんですか?」 「今、警察が踏み込むタイミングを図っているところです。 何分、人質がいるので、迂闊には手を出さないらしく… 銀波ちゃん以外にも、子供がいるようなんです。」 「そんな…どうしてあの子が…」 「とにかく、警察が動いてますから、任せましょう。 御宅の太陽君は動揺してませんか?」 「ええ、一緒に行くと言って聞かなくて… あれ?太陽?太陽!!!!! 何処に行ったんだろう………太陽!」

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