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人狼の村より…side:太陽①

シルバが? シルバが誘拐された? 次々と聞こえてくる遠吠えが、シルバの危機を知らせてくる。 シルバ! 何処にいるの? 痛いことされてない? 大丈夫なの? 「お父さんっ!シルバが、シルバがっ!」 「うん、どうやらそうみたいだ。 今、村長さんから連絡があったから、お父さんは役場に行ってくる。 詳しいこと聞いてくるから、待っててくれ。」 「俺も行くっ!連れて行って!お願いっ!」 お父さんは少し考えていたが 「…わかった。でも、お父さんの側を離れるんじゃないぞ!」 「うん!」 そして、連れてきてもらった役場は、大人達が大騒ぎで。 引っ切り無しに鳴り続ける電話。 大声が飛び交う館内。 人狼の遠吠えも絶えることなく次々と流れてくる。 シルバ…絶対に助ける! 待ってて!俺が行くから。 きょろきょろしているうちに、お父さんとはぐれてしまった。 追いかけなきゃ と思っていると、一段と騒がしくなった。 「拉致された場所が特定されたぞ!」 「何処だ!?」 「港の第三倉庫だ!警察が包囲してるらしい。」 「犯人は?」 「誘拐された子の、父親とか言ってた。 人間だそうだ。」 「突入は時間の問題だな。」 港!?第三倉庫!? おじいちゃんと釣りに行ったことがある! 多分あそこだ! 気づいたら駆け出していた。 シルバに会いたい! シルバを助けなきゃ! 俺を呼んでる! 『助けて』って泣いてる! 夜の道を夢中で駆け抜けた。 いつの間にか、黒狼になって。 月明かりの中、必死で走り続けた。 あそこだ… ぐるりと警官が周りを取り囲み、時折海の上からサーチライトが建物を照らしていた。 バタバタと上空で音がしている…ヘリコプター!? シルバはあの中か…

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