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緊迫①
side:輝
次々に入る無線連絡に、緊張感が高まっていく。
「…黒曜さん…」
思わず名前を呼ぶと、しっかりと俺の目を見て
「大丈夫だ。心配いらない。」
と微笑み、俺の頬を撫でてくれる
その手に擦り付いて、伝わる熱に安心する。
その時、突然
『人狼の子供が一人いなくなった!』
『何処で?誰だ?』
『攫われた子の番だそうだ。どうやら助けに行ったらしい』
『何だと?』
『白いシャツにジーンズ、五才の男の子だ。
第三倉庫に向かってる。
途中で獣化しているかも知れない。黒狼だ。
見つけたら、確保!』
『ラジャー』
花巻が叫んだ。
「ねぇ!シルバちゃんの番って言ってるよ!」
黒曜さんと俺は顔を見合わせた。
「「太陽君っ?」」
「花巻っ、シルバの番の太陽君だっ!」
「マジか?保育園児だろ?
…第三倉庫に向かってるなら確保できるかも…
要、聞こえる?」
『聞こえるよ!』
「後ろのお二人に協力してもらって、黒い子供の狼が走ってないか見てもらって!
恐らく獣化してるはず。
見つけたら確保!」
『ラジャー』
「須崎さんと葛西君も、頼む!
俺はとにかく運転に集中するから、よろしくね!」
「「わかった!」」
闇夜に目を凝らして小さな姿を探す。
一旦獣化を経験したこの身体は、人間の時とは遥かに能力が違う。
視力も筋力も体力も。
黒曜さんは俺の肩を抱いたまま、流れゆく景色の中、注意深く視線をあちこち追っていた。
いない…太陽君、一体何処に?
どうしてこんな無茶なことを…
シルバだけじゃなくて、君までいなくなったら…
じわりと溜まってきた涙をぐいと手の甲で拭い、夜の闇に目を凝らした。
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