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緊迫③
シルバを背に隠し、ぐるるるるっ と威嚇の唸り声を上げる。
だが、男達はそれに構わず、少しずつ近付いてくる。
どうしよう…せめてシルバだけでもっ!
「シルバ、動ける?」
「…ごめん、だめ。太陽君、早く逃げてっ!」
動かない俺達の様子を見た男達は
「…どうした?恐怖のあまり動けないのか?」
なんて余裕ぶった声を掛けてくる。
悔しい、悔しい、悔しい、悔しいっ!
俺が大人の狼なら、こんな奴ら蹴散らしてシルバを助け出すのに!
拳銃なんて噛み砕いて捨ててやるのにっ!
こんな所で俺達死んじゃうんだろうか?
父さん、離れてごめん。
母さん、わがまま言ってごめん。
でも俺!どうしてもシルバを助けたかったんだ!
「俺一人で捕まえるから待っててくれ。」
「大丈夫なのか?」
「二匹とも動けない。大丈夫だ。」
寝ていた男が一人で近付いて来た。
せめて噛み付いてやろうと歯をむき出して身構えた時、男がささやいた。
「助けてやるから心配するな。
俺は潜入捜査の人狼警察だ。」
え?潜入捜査?人狼警察?
驚く俺達をふわりと抱き上げ
「いいか、大人しくしてろよ。」
と念押しすると、あの二人の元には戻らず、あっという間に金属のコンテナの裏に滑り込んだ。
すかさず俺達を抱いている男が、左手の薬指に光る指輪に向かって大声で叫んだ。
確保ぉーーっ!突入ーーーーっ!!!
うおぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!
地鳴りのような大声とともに、倉庫のあちこちから警官が雪崩れ込んできた。
全員が銃口をあの二人に向けている。
「観念しろ!全て包囲されている!
大人しく拳銃を捨てて両手を上げろっ!!」
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