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緊迫⑦

俺達はその言葉を聞いて、益々頭を下げた。 きゅうっ! きゅうん! 俺の腕の中のチビ狼達が『そうだ、そうだ』と鳴いている。 「太陽君…シルバ…」 太陽君は俺の頬の涙をペロリと舐め、シルバの鼻先に自分の鼻先を擦り付けた後、するりと腕から抜け出して、お父さんに飛び付いた。 「太陽っ!」「きゅうん!」 太陽君を抱きしめるお父さんの目に光るものが。 尻尾をぶんぶんと振って、太陽君はお父さんと何か話している。 すると… シルバがあっという間に俺の腕から飛び降りて、お父さんの足元に座った。 その身体を軽々と抱き上げたお父さんに、シルバが何かを話すと、お父さんは二人をぎゅうっ と抱きしめて 「本当に…無事で良かった…」 と、ひと言呟くと涙をポロポロと流した。 周囲の喧騒はまだ続いている。 そんな中、俺達は、涙涙の感動の再会を果たしたのだった。 「おーーい!葛西くーーーん!!」 森田が走ってくる。 「とにかく帰りましょう。 ここでは子供達も落ち着かない。 その前に、子供達のバイタルチェックだけさせて下さい。 潜入していた警官の話だと、身体的には問題ないということでしたが、念のために。 精神面では必ずフォロー入れるようにしますから。 さ、皆さん、落ち着いてから詳しくお話をお聞きしますから、今日のところはこれで。」 それを受けて、黒曜さんが 「小橋さん、この度は本当に申し訳ありませんでした。 後日、必ずお詫びに伺います。 本当に、本当に申し訳ありませんでした。」 深々と頭を下げ、俺も同じく頭を下げた。 「…須崎さん…」 お父さんは俺達にそっとシルバを差し出すと 「勝手に飛び出した、うちの太陽が悪いんです。 あなた方のせいではありません。 お詫びはいりませんよ。」 と優しく微笑んで言ってくれた。

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