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緊迫⑧
お父さんは太陽君を撫でながら続けた。
「無鉄砲で後先考えずに突っ走る息子ですが…一体誰に似たんだか…ふふっ。
これに懲りず、どうか今まで以上に仲良くお付き合いをお願い致します。
さ、子供達を早く診てもらいましょう。」
森田を促して、俺達を先導するように歩き出した。
黒曜さんと俺達もその後に続いた。
あ!そうだ!
「兄さん!水谷さん!本当にありがとう。これ終わったら後で行ってもいい?」
「もちろん!コイツと待ってるから、遠慮なく来てくれ!」
「ありがとう!じゃあ、後で!」
未だ張り詰めた現場を後にして、俺達は病院に向かった。
診察の結果、太陽君は獣化して走った際に出来たであろう肉球(両手両足)の軽い擦過傷で、消毒の処置で済んだ。
シルバは、逃げ出そうとケージを引っ掻いた時に出来た、こちらも前足(両手)の擦過傷だけで済んだ。
メンタルの部分は…後々気を付けてやらなければ。
フラッシュバックが起きるかもしれない。
迷惑をかけた人達に重々お礼を言って、森田に兄さんのマンションまで送ってもらった。
「俺も直帰できたから助かるよ〜」
なんて笑う森田にもう一度「ありがとう」と伝えると、彼は急に真顔になって、人型に戻ったシルバをそっと抱きしめると
「…本当に、本当に無事で良かった…」
そのうち、森田の肩が震え出した。
「森田?」
シルバを抱いたまま、うえっ、うえっ と嗚咽する彼は、しばらく泣き続け…やがて、ぐいぐいと目元を拭うと
「…ごめん…ホッとしたら泣けてきて…
中澤さんからの伝言。
『明日明後日はゆっくり休むように』ってさ。
シルバちゃん、ママにうんと甘えなよ。
じゃあ、またね!お休み〜」
いつもの森田に戻っていた。
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