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緊迫⑩
兄さんが水谷さんの肩を叩く。
「芳樹…もういいから。輝はそんなこと望んじゃいない。
な、輝?」
「そうだよ!俺は大丈夫だから。
水谷さんだって、助けられた命を今度は誰かの役に立ちたいって警察官になって。
おじいちゃんの命日には必ず線香をあげに来てくれてるじゃないか!
それで、それで十分です。
おじいちゃんだって、絶対喜んでるよ。
それに…
兄さんと幸せになって下さい。
身内の俺が言うのも変だけど、物凄く出来た兄です。結婚すれば絶対に幸せになりますよ。
どうかよろしくお願いします。」
「輝…」
「…ありがとう…こちらこそ、よろしくお願いします。」
俺は水谷さんとがっちりと握手した。
すると今度は黒曜さんがきっちりと正座して
「今日は本当にお世話になりありがとうございました。
お陰でこうやって無事にシルバが帰ってきました。
迷惑かけついでにご馳走にもなっています。
本当に本当にありがとうございました!」
頭を下げる黒曜さんの肩を叩いた兄さんは
「はい、それでおしまい!
黒曜君、芳樹、飲むぞー!」
賑やかな宴会が始まった。
俺は、照れまくる水谷さんから、付き合うキッカケになった出来事から、どっちから告白したのか、結婚はいつするのかを聞き出し。
兄さんは、黒曜さんから俺との馴れ初めから妊娠に至るまでの話を事細かに聞いて。
シルバはご満悦でもぐもぐとひたすら食べて。
みんな翌日が休みなこともあり、和気藹々 と酒を酌み交わし、美味しい料理を堪能し、片付けも手伝った。
夜なのにカーテンを開けたままなのを不思議に思い、兄に尋ねると
「満月だから、その光で怪我も治るよ。」
と言われ、半信半疑で床についたのだが、翌朝、その通りになり驚いたのだった。
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