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雨降る夜③
話を聞いてると、旦那様が残業で遅い、シングルで子育てしなきゃならない、家族が家事に全く協力しない、とか…
それぞれに皆んな苦労しているらしい。
俺は…黒曜さんの仕事が自由が利くから迎えにも来てもらえるし、買い物だって一緒に行ってもらえる。
掃除も洗濯も、時には料理も。
シルバのお世話だってお手の物だ。
毎日送り迎えだってしてくれてる。
何て出来過ぎた夫なんだろう、って改めて黒曜さんに『ありがとう』って言いたくなった。
そう思うと、早く黒曜さんに会いたくて、うずうずしていると、着信があった。
黒曜さん!
「輝?着いたよ!」
「今行きます!」
「お疲れ様でした。お先に失礼します。」
まだ仕事中の先輩方に声を掛けて退出した。
トクトクと胸が高まっている。
早く、早く会いたいよ、黒曜さん。
逸 る気持ちを何とか落ち着かせて、俺を待つ黒曜さんの元へと急いだ。
いた!
まだ見慣れない車。
あの事故で大破した車は廃車になり、最新モデルのSUVに変わったのだった。
いつものように後部座席のドアを開けようとしたら、運転席の窓が開き
「輝、お疲れ様。今日はこっちに乗って。」
と助手席を指差された。
あれ?シルバは?
『ママ、お帰り!』というかわいらしい声が聞こえない。
スモークガラスで見えなくて、不安がよぎる。
回り込んでドアを開けて滑り込み、後ろを覗き込んでもシルバがいない。
「黒曜さん、シルバは?」
「今夜はね、太陽君ちにお泊まり。
あちらのお父さんが『どうしても』って。
明日、遊園地に行くから、ぜひ銀波も一緒に連れて行きたいんだって。
『あんな事件の後だから悩んだんだけど、それを吹き飛ばすくらいに遊んでくるから、お願いします』って頭下げて言われて『ダメです』なんて言えなかったんだ。
輝に無断で決めてしまってごめん。」
黒曜さんはぺこりと頭を下げた。
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