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雨降る夜④
「そうなんだ…いなくて物凄く不安になったけど、そうだったんだ…良かった…
シルバも太陽君と一緒なら楽しんでこれるよね?」
「うん、だから甘えてお願いすることにしたんだ。
銀波も行く気満々だったからな。」
「ふふっ、初めてのデート?」
「あぁ。ということで、俺達もデートしようと思って。」
「え?」
「もう狙われる心配もないから。
ねぇ、輝。俺達も恋人…夫夫らしいことも何にもしてこなかったよね、ごめん。
レストラン、予約してあるんだ。
あ、勿論人狼関係のお店だから何も心配いらないよ。
あの事件でさ、いろんな人達と知り合いになって、俺の人脈が格段に広がったんだよ。
銀波もいないし…今日は輝と二人でゆっくりと楽しもうと思って………ダメかな?」
黒曜さんの声が、段々尻窄みに小さくなっていく。
「ううん!凄くうれしい!
ありがとう、黒曜さん…」
「良かった…じゃあ少し早いけど、行こうか。」
「はい!」
何だか急にドキドキしてきた。
俺達も初めてのデート。
ご機嫌な黒曜さんの運転で、やがて車は小さな店構えの駐車場に滑り込んだ。
「ここだよ。」
漆喰の壁が真新しい小さな店。
玄関周りには色とりどりのビオラが植えられている。
窓越しに漏れてくる柔らかな光はランプかロウソクだろうか?
ワクワクしながら黒曜さんの後に続いた。
「いらっしゃいませ!あ、須崎さん、お待ちしておりました。
さ、こちらへどうぞ!」
「先日は本当にお世話になって…ありがとうございました。」
「いやいや、とんでもない!
あなた方のお陰で全て解決したんですから。
奥様もようこそ!…お身体大丈夫ですか?」
えっ!?俺のこと…ということは、やはりこの人も人狼?
オロオロしながら黒曜さんを見ると、(大丈夫)と言うように頷かれたから、慌てて挨拶した。
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