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産休⑥
花巻達が帰った後、シルバの迎えを済ませた黒曜さんに、早速二人の入籍のことを伝えた。
「へぇ…やっと落ち着くのか…彼らもラブラブだったからね。
良かった、良かった。
俺達、あの二人には本当に助けてもらってばかりだったから…うれしいよ。」
「浩一にーちゃん達、結婚するの?」
シルバも目をキラキラさせて聞いてきた。
「うん。今度会ったら『おめでとう』って言ってあげてね。」
「うん!」
入籍のお祝いは何がいいだろう。
二人が喜ぶものがいいな。
シルバも話に交じって、あれこれと検索して調べてはいたが、決まらずに保留になった。
シルバを寝かしつけてリビングに戻ると、黒曜さんに手招きされた。
「輝。」
「はい。黒曜さん、どうしたの?」
「あのな…俺、今まで恋愛物、頑なに拒否してきたんだけど、ちょっと書いてみようかなって思ってるんだ。」
「本当に?凄い…“ミステリー作家・須崎黒曜の新境地”ですね!
ワクワクします。
相葉君、きっと大喜びしますよ。」
「ははっ。今まで散々蹴散らしてきたからね。
…輝のお陰だよ。」
「えっ?俺?」
「そう。輝が俺と銀波に教えてくれたんだよ。
その思いを込めて…『ちょっと』じゃなくて、書きたくて書きたくてウズウズしてるんだ。
こんなの、初めてで…俺も戸惑ってる。」
「じゃあ、執筆の邪魔にならないようにしなくちゃ。
あ、でもご飯はしっかりと食べて下さいね!」
「あの時は…あ…でも、あの修羅場がなければ体調を崩すこともなかったから…
家出も病気も…全て俺達が結ばれるプログラムだったんだな…
最高の作品にしてみせるから…」
「物凄く楽しみです!」
逞しい腕にそっと寄り添った。
ほんわかと優しい温もりが伝わってきて、うっとりと目を閉じた。
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