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産休⑦

少しずつ物が増えていく。 そう、ベビー用品の。 おばあちゃんからはベビーベッドとベビーバスが。 両親からは、衣類関係がドッサリと。(これまた狼でも人型でもどちらでもいいようなタイプの物が) 兄は『どっち(狼か人型)か、生まれてきてからほしい物プレゼントするよ』と言ってくれている。 ある日、段々と賑やかになる部屋を見て、帰宅したシルバがボソリと呟いた。 「…赤ちゃん、プレゼント一杯だね。」 「シルバ… シルバにも“大おばあちゃん”達からプレゼントがあるんだよ。 部屋に行ってごらん。」 「ホント?僕にも?」 シルバが大慌てですっ飛んで行った。 その後姿を黒曜さんとそっと眺めていると うわぁーーーっ!!! シルバの大声が聞こえた。 「ママっ!黒曜っ! これ、これ、僕の?僕の?ホントに?」 「うん。ランドセルは“大ばあちゃん”、机は“たけじいちゃんとみっちゃん”からだよ。 浩司おじさんからは『シルバの好きな物を買ってやって』ってお金が届いたんだ。 良かったね、シルバ。 これで小学生の準備もできてきたね。 制服は指定された日にお店に行こう。 文房具なんかも買わなくちゃね。」 シルバは とことこと俺に近付くと、そっと抱きついてきた。 その柔らかな髪の毛を撫でていると、ひくひくと静かにしゃくりあげる声が聞こえてきた。 「シルバ?」 ふえっ、ふえっ、と嗚咽の声が聞こえたと思った途端 うわぁーーーーーん 俺に縋り付いて大泣きを始めてしまった。 戸惑いながらもシルバを抱きしめ、頭を背中を撫でてやる。 ふと黒曜さんを見上げると、ただ頷いていた。 赤ちゃんだけが大事にされてるって。 お兄ちゃんだからワガママ言わずに我慢しなきゃ、って思ってたのか…

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