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産休⑧

俺は床に座り、ヨイショと膝の上にシルバを抱きしめ返すと 「シルバ…シルバは俺達みんなの家族だって、何度も言ってるだろ? …寂しい思いをさせてごめんな。 ちょっぴりヤキモチ焼いちゃったんだよな。」 背中を摩ってやると、えぐえぐと泣きながら頷いた。 「…ごめんなさい…」 「謝ることはないよ。でも、良かったな。 みんなシルバのことが大好きだから、ちゃんと考えてくれてるんだよ。 もちろん、黒曜さんと俺も!」 シルバは顔を上げ、濡れた瞳でじっと見つめると、俺に抱きついてまた泣いた。 ぴょこりと出てきた耳と尻尾が垂れている。 遠慮するなと言っても、“本当の”親子じゃないから…どこかに埋まらない部分がきっとあるんだろう。 それは一生かかってもひょっとしたら埋まらないかもしれない。 けれども俺達は俺達なりの愛情で、少しずつ少しずつ満たしてやろうと決心した。 「さ、ご飯にしよう! シルバの好きなオムライスだよ! お代わりもあるからね。」 努めて明るい声でシルバを誘うと、赤い目で満面の笑みを浮かべたシルバは 「ママ、大好き!」 と、もう一度俺に ぎゅ と縋り付いた後、俺の膝から飛び降りて 「もいっかい、見てきていい?」 ぴんと立った尻尾を振りながら元気に部屋へ走って行った。 その後ろ姿を見送り、そっと目尻に浮かんだ涙を拭い立ち上がると、黒曜さんに後ろから抱きしめられた。 「…黒曜さん…」 「輝、ありがとう…輝のおばあちゃん、ご両親にお兄さん…ありがとう… 俺は、俺と銀波と…白磁も…輝や輝の家族に何てお礼を言えばいいのか… 生まれてくる子だけでなく、銀波にまで…」 「家族ですから。当たり前でしょ? さ、ご飯にしましょう! 今日のスープは絶品ですよ!」 キスを送られて、赤い顔のままキッチンへ向かった。

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