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ニュース②
「例の小説の反響が凄くてな、映画化が決まったんだ。」
「「すごぉーーーーーいっ!!!」」
『例の小説』…押しも押されもしない大人気のミステリー作家の黒曜さんが、初めて手掛けた恋愛小説…
今では携帯で本も読めるとあって紙の本離れが進む中、表紙や挿絵を これまた大人気のイラストレーターが描いて、若い女性を中心に、相乗効果で凄い話題になり、ベストセラーとなっていたのだった。
売上げが低迷していた本屋さん達も大喜びでプッシュしてくれ、益々売上げも伸びている…と聞いている。
「やっぱり黒曜さんはミステリーじゃなくて、恋愛小説が向いてたんですね。」
揶揄いがちに言うと
「だから…輝のお陰なんだってば。」
頭を掻き掻き、照れ臭そうに黒曜さんが俺を見つめる。
「…お役に立てて良かったです。」
釣られて俺まで真っ赤になった。
急にふっと真顔になった黒曜さんは
「…こうやって売れてくると、プライバシーを暴こうとする奴らも出てくる。
それでな…俺としては、今まで通り、顔出しはしない。
インタビューや取材には基本応じない。
出版社経由で流すものはあるけれど。
それは出版社にも相葉君にも、キツく言い渡してある。
もし約束を違 うようなことがあれば、筆を折ると。
万が一、輝や銀波達に害が及ぶようなことがあれば、その時は…」
黒曜さんのあまりの真剣さに、息をするのも忘れて聞き入っていた。
「その時は、俺にも覚悟がある。
だから、もし、何かおかしなことがあったら、すぐに教えてくれ。」
ゴクリと唾を飲み込み、こくこくと首を縦に振った。
『覚悟』…どういうことだろう…
何も、何も起こりませんようにと、ひたすら願っていた。
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