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不安①

見るからに落ち込んだ俺のことを気にしながら、森田が仕事に戻って行った。 彼が帰った後も、嫌な思いが ぐるぐると頭を巡っている。 俺のことが世間にバレたら 相当なスキャンダルだ。 スキャンダルどころの話ではない。 映画どころか、黒曜さんの作家生命も危うくなり、その存在すら…。 研究所かどこかに隔離されて、ラット扱いされてしまうかも。 俺はいい。俺自身のことなんて。 でも 黒曜さん、シルバと赤ちゃん、俺の家族達…花巻に森田、中澤部長や会社のみんな、人狼の村の人達、静かに暮らしている、あの事件で俺達を助けてくれた人狼のみんな… みんなに迷惑が掛かる。 一度ならず二度までも。 …二回目はない。 どうしよう…どうしたらいいのか… (ぐにゅ) あ… ごめん、ごめんね。 (ぐにゅ、ぐにゅ) ごめん…泣き虫のママでごめん… (ぐいーーっ ぐにゅり) ごめ…ご………うっ、う…うっ… その場に座り込んでひたすら泣いた。 「…ママ?どうしたの?」 いつの間に帰ってきたのか、振り向くと心配そうな顔のシルバがいた。 『お帰り』を言いたくても声が出ない。 「ママ?お腹痛いの?大丈夫?」 優しく背中を撫でてくれる小さな手の温もりに、また涙が溢れてきた。 「輝?輝?大丈夫か?」 黒曜さんっ! 黒曜さん…俺、俺… シルバごとふわりと抱きしめられた。 「大丈夫。心配いらないから。 お前が悩んで心配する必要はないよ。 全部俺達に任せておいて。 ほら、泣き止んで。」 大きな手で涙を拭われた。 何で?どうして知ってるの? シルバを抱きしめ、黒曜さんに縋り付いた。

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