298 / 337
不安①
見るからに落ち込んだ俺のことを気にしながら、森田が仕事に戻って行った。
彼が帰った後も、嫌な思いが ぐるぐると頭を巡っている。
俺のことが世間にバレたら
相当なスキャンダルだ。
スキャンダルどころの話ではない。
映画どころか、黒曜さんの作家生命も危うくなり、その存在すら…。
研究所かどこかに隔離されて、ラット扱いされてしまうかも。
俺はいい。俺自身のことなんて。
でも
黒曜さん、シルバと赤ちゃん、俺の家族達…花巻に森田、中澤部長や会社のみんな、人狼の村の人達、静かに暮らしている、あの事件で俺達を助けてくれた人狼のみんな…
みんなに迷惑が掛かる。
一度ならず二度までも。
…二回目はない。
どうしよう…どうしたらいいのか…
(ぐにゅ)
あ…
ごめん、ごめんね。
(ぐにゅ、ぐにゅ)
ごめん…泣き虫のママでごめん…
(ぐいーーっ ぐにゅり)
ごめ…ご………うっ、う…うっ…
その場に座り込んでひたすら泣いた。
「…ママ?どうしたの?」
いつの間に帰ってきたのか、振り向くと心配そうな顔のシルバがいた。
『お帰り』を言いたくても声が出ない。
「ママ?お腹痛いの?大丈夫?」
優しく背中を撫でてくれる小さな手の温もりに、また涙が溢れてきた。
「輝?輝?大丈夫か?」
黒曜さんっ!
黒曜さん…俺、俺…
シルバごとふわりと抱きしめられた。
「大丈夫。心配いらないから。
お前が悩んで心配する必要はないよ。
全部俺達に任せておいて。
ほら、泣き止んで。」
大きな手で涙を拭われた。
何で?どうして知ってるの?
シルバを抱きしめ、黒曜さんに縋り付いた。
ともだちにシェアしよう!