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不安③
え…?村長さんの息子?ということは人狼?
人間じゃ…ない。
かくりと力が抜けた。
「輝っ!?」
黒曜さんの大きな腕に受け止められた。
「…良かった…人間にバレたんじゃなくて…
黒曜さんの…みんなの…迷惑にならなくて…良かった…」
「輝…そんなこと気にしてたのか…
ごめん。守ってやれなくてごめん。」
ぎゅっ と力強く抱きしめられる。
温かい…とくとくと規則正しい心臓の音。
顔中舐められんばかりの勢いでキスの雨が降ってくる。
はあっ、はっ、はあっ
息切れがするくらいの激しいキスが止むと、また強く抱かれた。
「…隠すから暴きたくなるのか…人間の心理だな。
全部見せてしまえば、興味も薄れていくだろう。」
黒曜さんはそう呟いて、俺の涙を拭ってくれた。
「プライベートを晒したくないっていう、俺のワガママで、輝を苦しめてしまった…すまない…
別にミステリアスな部分を強調しようとか、購買心を煽ろうとか、そんな思いで公表しなかった訳じゃないんだ。
ただ、本当に、社会と寸断したかったから…
でも、それじゃ人間とは上手く渡り合えない。
隠せば隠す程、知りたい、暴きたいと思うのは当たり前の心理だ。
…インタビューやイベントにも出るようにするよ。
…一番苦手なんだけどね。」
「そんな!嫌なことを黒曜さんがすることないっ!
俺は、俺は大丈夫だからっ!」
「これは、お前達を守るため。
現時点では、家族は皆んな人狼だとは公表しないけどね。」
黒曜さんがウインクした。
そして、黙り込んだ俺の頭を撫でてキスした。
「これから忙しくなるけど…ごめんな。」
翌日、警察に赴いた黒曜さんは、村長親子の謝罪を受け入れた。
息子さんはかわいそうなくらいにしょげ返っていたそうだ。
“人間”じゃなくて、本当に…良かった…
ただ、それだけの思いだった。
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