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不安④
一週間後…黒曜さんが映画の宣伝のためにテレビに出た。
今まで一切表に出なかった人気作家の顔出しにその反響は凄まじく、マスコミに追いかけ回された黒曜さんは家に帰ることも ままならなくなり、シルバの送り迎えも、森田に頼む羽目になってしまった。
「ごめんな、森田。こんなことになっちゃって…
花巻、怒ってないか?」
「心配いらないよ。怒るどころか『ちゃんとしてあげて』って。
だから、俺達のことは心配しないで。
それより…大丈夫?」
「黒曜さんのことが心配なんだ。
ちゃんとご飯食べてるのか、とか、お布団で眠れてるのか、とか、着替えどうしてるんだろう、とか…」
「連絡はあるの?」
「電話は一昨日あっただけ。
ラ◯ンは来るけど、俺達の心配ばっかりで…電話掛けたくても、仕事中かも、って思ったら遠慮しちゃって…
…会いたいな…しんどい思いをしてるんじゃないかな…」
「ねぇ、ご飯食べてる?食欲ないんでしょ。
シルバちゃんと赤ちゃんのためにも、しっかり栄養取らなきゃ。
…シルバちゃん、心配してる。
『ママがあんまりご飯食べない』って。
子供は見てるんだよ。」
「え…シルバが?」
「うん。それでね、浩一とも相談したんだけど、しばらく二人とも、うちにおいでよ。
その方が俺達も安心だし。
誰か一緒にいた方が気が紛れるから。
それに…産気づいた時に、俺か浩一がいれば対処できるでしょ?
この様子だと、須崎さんはしばらく追い回されそうだし。
ね、そうしなよ。
お布団は俺達が運ぶし、そうしてくれたらうれしいな。」
森田達の心遣いに泣きそうになった。
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