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不安⑤

ぽろっ 不意に涙が溢れた。 「てっ、輝君っ!?ね、泣かないで! 嫌だった?俺達のうちに来るの…嫌?」 ふるふると首を横に振った。 「…違うんだ…そんなに俺達のこと、心配してくれてるなんて… 俺、森田達に迷惑ばかり掛けてるのに… ごめん、ごめんな、森田…」 「迷惑じゃないよ。 俺、嫌なことは嫌ってはっきり言うから。 ほら、泣かないで。 赤ちゃんが心配するよ。」 そっとお腹を撫でてくれる。 その優しさに、止めようとしても涙は溢れてくる。 心配してオロオロする森田には申し訳なかったのだが、森田に縋り付いて大泣きしてしまった。 「あ!電話!…どうする?出る?」 「…うん。」 森田が携帯を持ってきてくれた。 黒曜さんっ!? 「もしもしっ!?黒曜さんっ!? 大丈夫なのっ!?ご飯食べてる?ちゃんと休んでるのっ!?」 矢継ぎ早の質問に、電話の向こうの黒曜さんの笑い声が聞こえた。 「…輝…お前って… 俺は大丈夫。ホテルに缶詰めされてるけどね。 連日のマスコミ対応で、もう嫌になっちゃったよ。でも、これは今までのツケだと思うよ。 三食食べてるし、しっかり寝てるよ。 大事な時に帰れなくてごめんな。 輝…どうした?…不安にさせてすまない。 しばらくしたらこの騒動も落ち着くと思う。 銀波の世話もすまない。 花巻君や森田君が手助けしてくれてるんだろう? このお詫びとお礼は必ずするから。 あぁ…この腕に抱きしめたいよ… 輝、泣かないで…」 耳元で響く優しく甘い声に、俺はもう返事もできなかった。 『泣き声を聞かせちゃダメだ。』 そう思うのに、涙と嗚咽は止まってくれない。

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