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不安⑦

やがて花巻がシルバと一緒に帰ってきた。 シルバは「ママぁ、ただいまぁ!」と俺にいつものようにぎゅうっとハグした後、おやつも食べずに必要なものをカバンに詰め始めた。 あれ? あぁ…きっと森田から花巻に、黒曜さんと俺の了解を得たことの連絡がいったのだ。 そして花巻から、『しばらく花巻の家で過ごす』ということを聞き、(さと)いあの子は、黒曜さんが帰ってこないこと、俺の様子がおかしいことが合致し、『何かが起こっている』と瞬時に理解したのだろう。 「ママぁ!これ、持って行ってもいい?」 取り出したのはランドセル。 「まだ早いよ。置いてお」 言い掛けた俺の言葉を森田が遮った。 「いいよ!毎日側に置いときたいんだもんね。 それも持っておいで。」 「はーーい!」 その間にも、花巻と森田は俺達の荷物をどんどん運んでくれる。 すぐにプチ引越しが終わってしまった。 森田がお茶を入れてくれて、俺が作ったシフォンケーキで、引越し蕎麦ならぬ引越しケーキ。 「凄い。早っ。お前達その手際の良さ、何?」 「へへっ。二人だからできるんだ。 これが相方が違えば、全然だよ。ね、浩一?」 「うん。俺もそう。 …番って、こんなとこにも影響するんだよな。 ねぇ、『結婚』ってどんなもの? 二人を見てたら本当に“愛し合ってるな”っていうのが、しみじみ伝わってくるんだけど。 『同棲』と何が違うのかな… 俺達、ずっと一緒に暮らしてるから、その辺の区切りが実感わかないというのか…」 「うん。指輪だって交換したし、仕事もプライベートも常に一緒だから、何が変わるのかな…って。」 大人の話にそっとシルバを見遣ると、さっさと食器をキッチンに持って行って、俺達に当てられた部屋へ行ってしまった。 全く…どんだけ気を使うんだよ。

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